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2022.10.14

政府が進める防災・減災、国土強靭化とは?効果発揮事例もあわせて見てみよう

近年、私たちの身の回りでは気候変動による豪雨、土砂災害、大雪など、さまざまな気象災害が発生しています。そのほかにも、火山活動が活発な環太平洋変動帯に位置している日本では、全世界で起こるマグニチュード6.0以上の地震発生回数のうち18.5%(2004年〜2013年)と高い割合を占めているそうです。

南海トラフ地震や首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震など、今後起こると指摘されている大規模震災。私たちはこのような自然災害から身を守らなければなりません。

政府では、主要政策のひとつとして「災害対応」を挙げ、防災・減災、国土強靭化への取組みが進められています。
まずは「国土強靭化」について見ていきましょう。

事後対策から事前対策へ…「国土強靭化」とは

日本は、これまでもさまざまな大規模自然災害を経験しています。

昭和34年の伊勢湾台風では、明治以降最多の死者・行方不明者数5,098名に及ぶ被害が生じました。この災害を契機として日本の防災対策の原点となる災害対策基本法が制定されています。

平成7年の阪神・淡路大震災では、観測史上最大となる震度7の直下型地震が起こり、家屋の圧壊、大規模な市街地延焼火災、高架橋の倒壊等、多大な人的物的被害が発生しました。
このことから住宅・建築物の耐震化木造住宅密集市街地対策インフラの耐震性強化などに着手し始めたそうです。また、このとき家屋倒壊で家の下敷きになった人が、近所の人々に助け出されたことから自助共助の大切さが認識されました。

平成23年の東日本大震災では、観測史上最大のマグニチュード9.0という巨大地震と、40メートルを越える大津波が襲い、堤防では完全に防ぎきれず、多くの死亡者・行方不明者を出す大災害となりました。
東日本大震災は、これまでのインフラ整備中心の防災対策だけでは限界があることを教訓として残しました。

このような大規模自然災害の度に甚大な被害を受け、日本は長い期間をかけて復旧・復興を図ることを余儀なくされてきました。政府では「事後対策」の繰り返しを避けるために、最悪の事態を念頭に置いて、平時から備えを行うことが重要と伝えています。

参考:内閣官房/国土強靭化推進室/「国土強靱化進めよう!」(令和3年3月版)

国土強靭化とは、大規模自然災害時に、人命を守り、経済社会への被害が致命的にならず、迅速に回復する「強さとしなやかさ」 を備えた国土、経済社会システムを平時から構築していくことです。

参考:内閣官房/国土強靭化推進室/「すすめよう災害に強い国づくり」(令和4年1月版)

人命を守り、私たちの国土や経済、暮らしが、災害や事故などで致命的な被害を負わない強さと速やかに回復するしなやかさをもつこと。これが国土強靭化の考えです。
政府では地震や津波、台風などの自然災害に強い国・地域づくりを目指す取組みが進められています。

防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策

政府では、平成23年に発生した東日本大震災の教訓を活かすため、平成25年12月「国土強靭化基本法」を施行しました。
(正式名称は「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」)

翌年、平成26年6月には「国土強靭化基本法」に基づく計画等の指針となる「国土強靭化基本計画」が策定、平成30年には西日本豪雨・台風21号・北海道胆振東部地震の被害を受けて「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」が閣議決定されました。

この3か年緊急対策は、従来の取組みに加え、災害時に人命・経済・暮らしを守り支える重要なインフラの機能を維持できるよう予算を大幅に増額し、3年間集中で緊急を要する対策を進めるというものです。
2,000を超える河川の改修・整備、1,000か所のため池の改修・整備などにより、人命を守る防災・減災に取組み、55万kWの分散型電源等の導入、関西国際空港を含む6空港での浸水対策、携帯電話基地局に関する緊急対策などを進め、災害時もライフラインを維持できるように強靭化を目指しました。

参考:内閣官房/「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」特集サイト

さらに続く…防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策

国土強靭化3か年緊急対策については令和2年度が最終年度となっていましたが、国土強靭化のさらなる加速化・深化を図るため、期日を令和7年度まで延長し、“緊急対策”を引き継いだ「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」を策定しました。

防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策 概要
1.基本的な考え方
近年、気候変動の影響により気象災害が激甚化・頻発化し、南海トラフ地震等の大規模地震は切迫している。また、高度成長期以降に集中的に整備されたインフラが今後一斉に老朽化するが、適切な対応をしなければ負担の増大のみならず、社会経済システムが機能不全に陥るおそれがある。
このような危機に打ち勝ち、国民の生命・財産を守り、社会の重要な機能を維持するため、防災・減災、国土強靱化の取組の加速化・深化を図る必要がある。また、国土強靱化の施策を効率的に進めるためにはデジタル技術の活用等が不可欠である。
このため、「激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策」「予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策の加速」「国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進」の各分野について、更なる加速化・深化を図ることとし、令和7年度までの5か年に追加的に必要となる事業規模等を定め、重点的・集中的に対策を講ずる。

重点的に取組む対策・事業規模については

  1. 激甚化する風水害や切迫する大規模地震等への対策        ……12.3兆円程度
  2. 予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた老朽化対策   ……2.7兆円程度
  3. 国土強靱化に関する施策を効率的に進めるためのデジタル化等の推進……0.2兆円程度

合計15兆円程度の予算が組まれています。

参考:内閣官房/防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策

防災・減災、国土強靱化の効果発揮事例と入札案件データ

内閣官房HPには「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」・「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」等による整備事例、効果事例等が掲載されています。
その各事例を入札王でキーワードを使って検索してみました。

キーワード:「水道管路」「緊急改善」「布設替」

石川県能登地方を震源とする地震における効果発揮事例
<水道管路緊急改善事業>
概 要:
地震災害等で破損した場合に断水の影響が広範囲にわたる上水道の基幹管路(送水管・配水本管)について、耐震化を図ることにより、市民生活や産業活動に欠かせないライフラインである水道の耐災害性を強化し、災害時における大規模かつ長期的な断水のリスクを軽減する。
実施主体:石川県珠洲市
実施場所:石川県珠洲市三崎町
事業概要:耐震管への布設替
(省略)
事 業 費:約9000万円
効 果:
三崎地区では、昭和46~47年度にかけて布設された石綿セメント管が布設後40年以上を経過している。老朽化が進み、耐震強度も低いことから、耐震管に布設替えすることで、安定的な水の供給を確保し災害時の被害軽減も図られる。
今回の地震(震度6弱、M5.2)において、対策箇所における被害はなかった。

参考:内閣官房/水道管路緊急改善事業

キーワード:「水道管路」「緊急改善」「布設替」

令和4年福島県沖を震源とする地震における効果発揮事例
<多賀城(元)法面整備工事>
概 要:
災害発生時における施設の機能を維持・強化するため、経年劣化の著しい多賀城駐屯地の火薬庫地域について落石防止工事を実施した。
実施主体: 陸上自衛隊
実施場所: 宮城県多賀城市
事業概要:(省略)落石防止ネット等で斜面全体を覆う落石防止工事
事業費: 約1.23億円
効 果:
令和4年3月16日の福島県沖を震源とする地震において、多賀城市では震度5強を観測したが、当該施設において被害は生じなかった。

参考:内閣官房/多賀城(元)法面整備工事

政府の豪雨災害の対応について入札データで検索

「防災・減災、国土強靱化の推進」には、豪雨災害への対応も含まれています。
政府では2022年6月、線状降水帯による大雨の可能性を半日程度前から呼びかける取組みも開始されました。
線状降水帯とは、次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなし、同じ場所を通過または停滞することで作り出される線状に伸びた雨域のことで、発生すると数時間に渡って同じ地域に豪雨が起こるものです。

6月から開始する線状降水帯予測について、気象庁、文部科学省から下記のような発表がありました。

気象庁
線状降水帯予測の開始について

(省略)
さらに、予測精度を高めるための産学官連携の取組を一層強化します。具体的には、今年の梅雨期には、大学等の複数の研究機関と連携して線状降水帯のメカニズム解明に向けた高密度な集中観測を実施します。また、文部科学省・理化学研究所の全面的な協力を得て、スーパーコンピュータ「富岳」を活用して、開発中の予報モデルのリアルタイムシミュレーション実験を実施します。

入札王で「スーパーコンピュータ」「線状降水帯」を入れて検索してみると、気象庁が発注した案件が見つかりました。

これらの取組を通じて、令和 11 年度には市町村単位での情報提供を目指すなど、線状降水帯による大雨災害の防止・軽減に向けてさらなる予測精度の向上を図ってまいります。

参考:文部科学省/スーパーコンピュータ「富岳」を活用した線状降水帯予測の取組について

現在は「九州北部」など大まかな地域が対象になっている線状降水帯予測の情報提供ですが、気象庁では令和11年度には市町村単位で情報提供ができるよう取組んでいるそうです。

このように多くの自然災害が起こりやすい日本。
今後も、政府が、国民が、社会全体で一丸となって防災・減災、国土強靱化に取組んでいかなければなりませんね。


いかがでしたでしょうか。
今回は入札王のデータも交えながら、政府の防災・減災、国土強靱化の取組みについてお話いたしました。

入札王では、入札の情報だけではなく落札情報や予算書情報も扱っているので、計画策定に活かすことも可能です。
今回のように多くある官公庁の入札情報からキーワードを絞って探すこともできますので、効率的に入札の情報収集をしたい、という方はぜひ入札王をお試しください。
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