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2022.01.21

賃上げで入札に加点?新しい経済対策と「総合評価落札方式」とは

新型コロナウイルスの影響が続き、日本では失業率の増加・賃金の低下が顕著化しています。
2021年11月26日、総理官邸で<第3回新しい資本主義実現会議>が行われました。会議では賃金や人的資本について議論され、岸田総理から次のような発言がありました。

民間側においても、来年の春闘において、業績がコロナ前の水準を回復した企業について、新しい資本主義の起動にふさわしい、3パーセントを超える賃上げを期待いたします。
政府としては、民間企業の賃上げを支援するための環境の整備に全力で取り組みます。
(中略)
第5に、政府調達において、賃上げを行う企業に対して、加点を行うなど、調達方法の見直しを行います。

引用:
内閣官房
新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議

政府調達とは、国や地方自治体が物品やリース及びサービス(建設工事を含む)の購入をする等官公庁における入札のことです。もうひとつ、加点とは一般競争入札の「総合評価落札方式」で評価としてプラスされる加算点のこと。つまり、賃上げをする企業には「総合評価落札方式」の評価加点を行うと伝えています。

「総合評価落札方式」とは?

総合評価落札方式は、価格価格以外の要素を総合的に判断する方式であり、入札者が示す価格と技術提案を総合的に評価し、落札者を決定する方式です。

この方式は、スーパーコンピュータの入札方式として平成2年に初めて導入されました。より処理速度の速いスーパーコンピュータを求めるには性能の高いものを選ばなければならず、金額のほかに技術や性能等を数値化して落札基準に加える必要があったためです。

[2]総合評価落札方式
入札において、価格入札のみならず事業者の専門的知識、技術及び創意等(以下「技術等」という。)を提示する提案書の提出を求め、価格と技術等の総合評価により落札者を定めて契約を締結する方式です。
総合評価落札方式の入札は、現時点では、工事関連を除くと、研究開発、調査及び広報の業務並びにコンピューター関連調達に適用できることになっています。

引用:
環境省
環境省における契約手続(工事関連を除く)の概要

上記は環境省における工事関連を除いた総合評価落札方式の解説です。
公共工事の調達においても、従来の価格のみの競争では品質低下や環境破壊を起こしてしまう恐れがあるため、2005年に『公共工事の品質確保の促進に関する法律』が制定され、価格と品質の両面を求める総合評価落札方式が主流になってきています。

Ⅰ 総合評価落札方式の概要
(中略)
また、本方式は、公共建築工事の発注者にとって価格その他の要素が総合的に最も有利な者を選択できる方式である。つまり、入札時に提示する工事目的物の性能や工事の特性に対して、より適切に社会的影響や社会的要請に対応し、公共建築工事の発注者としての責務を果たすため、価格と技術提案等が総合的に優れた者を選定する方式である。

引用:
国土交通省
公共建築工事総合評価落札方式適用マニュアル・事例集(第2版)

また、評価する項目は工事の特性により分けられています。
市区町村が発注することの多い技術的な工夫の余地が小さい小規模な工事の場合、総合評価方式のタイプは「簡易型」、もしくは「市区町村向け簡易型(特別簡易型)」になることが多いようです。このほかにも標準型、高度技術提案型、技術提案評価型AⅠ型、施工能力評価型Ⅱ型等さまざまなタイプがあります。

評価値(公共工事)について

前述したように公共工事における総合評価落札方式はそれぞれのタイプによって評価項目が違います。
例として、東京江東区総合評価方式実施のガイドラインを見てみましょう。

▼江東区総合評価方式実施ガイドライン
https://www.city.koto.lg.jp/053101/kuse/keyaku/minasama/sougouhyoukar2.html

江東区では原則、予定価格3,000万円以上の工事で区が指定する工事を対象として市区町村向け簡易型(特別簡易型)を採用しています。

(1)価格点
(2)施工能力評価点
(3)地域貢献点

落札者は上記の3点を合計した評価値から決定されるようです。
その中の「地域貢献点」についてどのように分かれているか見ていきましょう。

<地域貢献点の評価について>

【地域精通度について】・・・最大3点
共同運営登録の事業所情報から下表に基づき算出する。 区内本店(設置3年以上) 3 点
区内支店等設置後 20 年以上 2 点
区内支店等設置後 20 年未満 1 点
区内本店(設置3年未満) 0点

【災害協定の有無】…1 点
江東区との協定のみを対象として、締結の有無で算出する。

【災害対応の出動の有無】・・・1 点
発注年度及び、前3年度以内に水防・雪害対策等の出動実績の有無で算出。

【環境配慮について】・・・0.5点
下表に該当する認証を取得し、かつ発注案件の入札日が認証期間内であるかを判断する。
ISO14001
エコアクション21
エコステージ(ステージ2以上の認証)
KES・環境マネジメントシステム・スタンダード(ステップ2以上の認証)
⇒いずれかに該当する場合0.5点

賃上げの評価加点・記載について

政府から通達された「総合評価落札方式における賃上げを実施する企業に対する加点措置について」によると、国土交通省直轄工事「施工能力評価型Ⅱ型」の場合、加算点の合計の5%以上となるよう加算の配点を設定(例:加算点が従来40点満点の場合:3点※約7%)するとのことです。

また賃上げに加算される総合評価落札方式の案件の場合は、下記のように明記すると書かれています。

《入札公告・入札説明書等記載例》-工事、建設コンサルタント業務等
対象工事等については、賃上げを実施する企業を評価する工事等である旨を入札公告及び入札説明書に明記する。

最後に

このように、国が推し進める賃上げ支援策は入札市場にも広がってきています。

経済界におかれましては、来年の春闘においては、2019年2.18パーセント、2020年2パーセント、そして2021年1.86パーセントと低下する賃上げの水準を、思い切って、一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい、賃上げが実現することを期待いたします。

引用:
内閣官房
新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議

岸田総理のこの言葉通り、社会全体に広がるこの賃上げ支援が新しい時代へと進化する施策のひとつとなると良いですね。


いかがでしたでしょうか。
総合評価落札方式はさまざまな背景から誕生し、今もなお社会と共に変化していることがお分かりいただけたかと思います。

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